あなたのグレート・リセット(2021年12月23日発信)

●令和3年12月23日(木)、2学期終業式(式辞)では、「グレート・リセット」という考え方について伝え、来年の取組について確認し、「あなたのグレート・リセット」をこの時期にしてほしい旨伝えました。(校内LIVE配信)。その内容は、次の通りです。

○私たちが、今、迎えようとしているのは、太陽の運行を基準にした、年の変わり目です。昨年の今頃は?と問いかければ、さまざまな1年があったと思います。これまでも、この先も、地球が太陽の周りを回っている限り、この時期に、同じような問いを投げ続けて生きていることを忘れないようにしたいと思います。そして、あらためて、この1年、どれだけ、どんな「知的な雪かき」ができましたか? 1年の終わりにあたり、みなさんに考えてほしいこと、覚えてほしい3つの英単語についてお話しします。

○世界全体を見れば、オミクロン株の感染拡大が懸念されています。人工知能の予測によれば、来年の1月末には、東京で1日あたりの感染者数が3000人を超えるおそれがあるということです。たしかに、ひたひたと迫りくる危機を感じないわけではありません。しかしながら、私たちは「新しい生活様式」の有効性を既に実証済みです。新薬の恩恵を受けながら、政治や経済・社会の新しい体制作りに向けて取り組んでいるのが現状です。

○私は、この変化を「グレート・リセット(Great Reset)」という言葉で理解したいと思います。「グレート・リセット」とは、世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)の創設者・会長 クラウス・シュワブ氏が提唱した、これまで以上に持続可能で公平な世界経済を早急に作り上げるべきだという考え方です。今年、シンガポールで開催される予定だった世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)のテーマとして掲げられたものです。私たちの生き方、働き方、互いの交流のあり方を変える必要があるということを指した言葉です。

○この言葉の意味を理解するために、3つのキーワードを示します。1つは、Sustainability、2つ目はInclusivity、3つ目はResilienceです(担任の先生は板書をお願いします)。これは時代のキーワードですから、知っておく必要があります。今日のこの時間に覚えてください。11月に来校した東京大学の池谷裕二先生も紹介した、スワヒリ語40語を大学生に覚えさせる実験で学んだように、脳はアウトプット志向ですからね。担任の先生が板書したら、声に出して、読んでください。全校生徒で、「海馬」を騙(だま)しましょう。(今から、英語科酒井先生が発音しますから、それに続いて読んでください。)

・Sustainabilityとは? SDGsの最初のS 、持続可能性のことです。先週、安城市立梨の里小学校に授業参観に行ってきました。小学4年生の生徒が、SDGsの目標達成のために何ができるか?話し合っていました。彼らは、SDGs17の目標をすべて覚えていて、その番号で話し合っていましたよ。これには、びっくりしました。

・Inclusivityとは? 包摂性のことです。社会的に弱い立場にある人々をも含め、一人ひとりを孤独や孤立から援護し、社会の一員として取り込み、支え合う考え方のことです。イギリス在住のコラムニスト、ブレイディみかこ氏のベストセラー「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社)には、こんな定型英語表現が紹介されています。「自分で誰かの靴を履いてみること(Stand in someone’s shoes./Put yourself  in someone’s shoes.)。「他人の立場に立ってみる」「相手の視点から眺めてみる」「相手が感じるように自分も感じてみる」ことが、包摂性の第一歩なのではないでしょうか。

・Resilienceとは? 回復力のことです。困難な問題、いやな状況、ストレスに直面しても、立ち直ることができる力のことです。ストレスに対して、自分の心をセルフコントロールすることはとても大切です。そのためには、自分の心をコントロールできる良い言葉を口に出すこと(アウトプットすること)が必要です。池谷裕二先生は、そのことの大切さも教えてくれました。

○幸せという言葉があります。英語では? すぐに浮かぶのが、Happinessですね。でも、先の「グレート・リセット」という言葉を世界に投げかけたシュワブ氏は、その著書で別の単語を充てています<・・・?・・・>。Well beingです。 この二つの言葉の意味は、どう違うと思いますか?

ポジティブ心理学によれば、Happinessとは「感情的で一瞬しか続かない、スパンの短い幸せ」(ワクワクする感情)のこと、Well beingとは、「身体的、精神的、社会的に良好な状態」「持続する幸せ」(良好であり続ける状態)のことです(心理学者セリグマン氏)。

○感染症を契機に、政治や経済・社会の新しい体制作りに向けた取組が始まっているわけですが、その目指すところは、Sustainabilityの視点から、Well beingな体制を作るということです。それに伴い、今後社会で求められる人材、そして学校の在り方も変化します。人生100年時代、100年を生きる皆さんに求められる見方・考え方が、Inclusivity(包摂性)とResilience(回復力)です。そのように考えてみてください。

○来年の安城東高校は、新しい体制で動きます。太陽の運行に合わせて、部活動時間を長くとれる春夏と物事を深く考える秋冬の7限総合学習の設定時期を変え、時間割にリズムを作ります。そこで、世界と日本、地域の未来のWell beingな在り方について学ぶ、グローカル・スタディーズ(GLS)を始めます。今年の4月から準備を進めてきました。だから、私は皆さんにも、「あなたのグレート・リセット」を求めます。

○私は、大晦日の夜に、「星に願いを、月に祈りを」捧げれば本当に聞いてくれそうだと昔から思ってきました。その気持ちは今も変わりがありません。地元の神社に行って、たまにしか会えない旧い同級生に声を掛け合い、松明(たいまつ)の向こうに「明日への手紙」を思い描くことは今でも続いています。これは、過去と現在、そして未来との語らいが始まる瞬間であり、この時、二度と来ない時の輝きを感じます。そんな私と出会う人たちがこの中にもいます。是非、声をおかけください。

○それでは、新しい年、一層さわやかで、健康的な皆さんと再会できることを期待して、皆さんとこの曲を聴いて終わります。手嶌葵、「明日への手紙」(クリック!)

●それでは、皆さんのご家族とともに、良いお年をお迎えください。(良い年にしタイガー!)

(学校長)