「碧海野だより」第154号(3月1日発行)より「冠沓(グローカル)」

ー『碧海野(おうみの)だより』(安城東高校PTA通信)第154号(3月1日発行)よりー

 

「冠沓(グローカル)」

第四十六回生のみなさん、そして保護者の皆様、ご卒業本当におめでとうございます。

2学期終業式でもお話ししました(HPにも載せてあります)が、これからは情報AI革命が更に進み、変動、不確実、複雑、曖昧な社会を生きていかなければなりません。しかしそのような時代だからこそ、逆に人間の繋がりが重要だと思います。その意味でも、三学期始業式でお話ししたように、安城東高校の同窓という縁や繋がりを、自分の持っている資源の一つとして大事にしていって下さい。

さて、私が以前作った「沓冠折句(くつかぶりおりく)」の歌を、「馬の鼻向け」としてみなさんにお贈りします。(「馬の鼻向け」とは古典『土佐日記』の「門出」にも出てくる言葉で、「はなむけ」の語源となったものです。ぜひ調べてみて下さい。)「沓」は現代の靴につながるもので、履き物のことです。「冠」は地位 や 階級 などを示すために 頭 にかぶる 装飾品です。「折句」は、愛知県知立市が出てくることで有名な『伊勢物語』の「東下り」を古典の授業でみなさんは習ったはずなので、和歌の修辞法のことだと理解できるはずです。次の二つの歌から沓冠折句の歌がどんなものなのか考えてみて下さい。

 

その笑顔

罪なきその目

きらめいて

よくがんばったと

うれしく思う

 

来(こ)し方が

例ならざらん

離(か)れたらば

爛漫(らんまん)とあれ

求めん道よ

 

ちなみに 十二世紀初に成立した『俊頼髄脳』(源俊頼著)という歌論書に次のような一節があります。

「沓冠折句といへるものあり。十文字あることを、句の上下に置きてよめるなり。」

 

この一年間、式などで話す機会があるたびに繰り返し伝えてきましたが、本校のスクールポリシーの一つであり、人材育成方針の一つでもある「グローバルな視野をもち自己の足元を見つめ、ローカルな視点で行動できる人」になって下さい。そのためには、高い視点(冠)から広い視野を保ちつつ、足元(沓)の土台をしっかり固めて歩み続けて下さい。卒業おめでとう!これからもがんばれよ!