先輩として伝える「美しい東高祭」(2021年5月24日発信)

●令和3年5月24日、東高祭の結団式に際して、「先輩として伝える<美しい東高祭>」というメッセージを全校生徒に発信しました。その内容の一部は、次の通りです。

○本日こうして、東高祭の結団式を迎えることができていることに、まず感謝したいと思います。今日の朝7時30分から、東京・大阪では新型コロナウイルスの大規模接種の受付がスタートしています。世界は、日本は、そして人類は、この器用に変異するウイルスに対して、命の安全保障をめぐる戦いを展開し、今この瞬間も医師や看護師達は命をつなぐ医療活動に最善を尽くすとともに、世界では、1分間に、156人もの新たな命が誕生しています。こうした中、学校が継続され、ましてや東高祭まで開かれるというのはなぜだと思いますか。

○それは、社会が皆さんの将来の活躍に期待しているからだと私は考えています。その期待に応えるべく命の躍動としての東高祭に、全身全霊で取り組んでほしいと思います。それを、私たち職員はサポートすることをお約束します。

○結団式の「結」にはどんな意味がありますか。これには、「結ぶ」、「つなぐ」という意味があります。では、何を結び、つなぐのか。私はその意味を3つの層で捉えています。1つ目は、団長をリーダーに団員をつなぐ、これは新入生から3年生まで縦をつなぐということです。そして2つ目、各学年の横もつなぐ、同級生をつなぐことも忘れてはならない。3つ目は、皆を東高の一員としてつなぐということです。つまり、安城東高校の縦糸と横糸を結びつなぐ場が東高祭であることを自覚して欲しいと思います。

○そしてもう一つ、忘れてはならないことがあります。東高祭は「1.6%の営み」であるということです。では、「1.6%の営み」とは何か。それは、チンパンジーとヒトの遺伝子の違いです。チンパンジーとヒトの遺伝子の違いは1.6%でしかないということです。その1.6%の違いが、絶滅危惧種としてのチンパンジーとヒトを分けたといわれています(タンパク質レベルでは大きな違いあるとの研究、諸説が別にあります。)。

○ヒトは、人類のいつかはわからないが、チンパンジーとは異なり、自分さえ生き延びれば良いという競争的な知能を捨て、皆が工夫して協働しあうという協力的な知能を獲得しました。共に目的を共有して協働作業をするようになったということです。この協力的な知能、利他行動に目覚めたことが、ヒト科の特色です(自然人類学者の長谷川眞理子著「世界は美しく不思議に満ちている〜共感から考えるヒトの進化」青土社より)。私はこのことを美しいことだと思います。「勝って嬉しい」、「負けて悔しい」という感情とともに、誰もが「楽しかった」、「良かった」、「サイコー」といえる「美しい東高祭」でありたいと切に願っています。

○私は、40年前、このグランドの応援合戦で、「土人」(当時はこの言葉を使っていた。今ではこの「土人」は、良識ある人は使わない、差別的な表現です。)の踊りを披露していました。なぜ私がその係りなったのか、なぜ短パン一丁で体を墨で「黒く」(「土人」を「黒く」というのも今では差別的表現です。)塗り、二つのモアイ像を一生懸命作り、それを前に、体育祭で踊ることになったのか、全く覚えていません。

○でも、当時流行っていた松田聖子の「青い珊瑚礁」を繰り返し聴きながら、「聖子ちゃんって、サイコー」って友人と語りながら、モアイ像を作っていたことを思い出します。それを思い出すと、40年たった今でも、私の末端部からエネルギーが満ち溢れてくるのを感じます。すべてエネルギーは、愛から生まれてくると思います。私にとってこのイベントは、愛に満ち溢れ涙が出ちゃうほどの出来事でした。思い出すと身震いがするというのは、このことです。それが東高祭であることを、先輩としてお伝えしたい。

あとは、団長、よろしくお願いします。

●この「先輩として伝える<美しい東高祭>」について、Classiを通して寄せられた東高生の意見は、1週間で40通でした。以下に主なものを掲げます。

<1年六ッ美北中学校出身>「今日この話を聞いて、人間とチンパンジーの違いである1.6%が大きな違いを作っているということに気付かされました。この1.6%を生かして楽しみ、また、先生のように思い出に残したいです。」

<2年桜井中学校出身>「1,6%の営みから、学年問わず協力して東高祭を大成功させよう!と思いました。また、終わったあと悔いではなく、楽しかったという思いが残るように精一杯全力を尽くして頑張りたいと思います。」

<2年安城南中学校出身>「チンパンジーと人間の違いがたった少ししかないのに驚きました。でも数字的には少しでも物理的には大きな違いがあるように思えます。東高祭でも同じように数字的には少しの工夫や努力でも物理的、結果的には大きな違いになってくると信じて頑張りたいなと思いました。」

<2年形原中学校出身>「ほんの少しの変化でも物事が大きく変わるという事に感心しました。この事を東高祭の一つ一つに活かしていきたいと思いました。」

<3年刈谷市内中学校出身>「新型コロナウイルスが昨年から広まっているなかでも、引き続き学校祭を開けるのはありがたい事と感じます。また、学年と学校中の縦と横の糸を結ぶ機会です。絆を深めます。」

<3年翔南中学校出身>1人1人が全力で楽しめて思い出になる体育祭になるように、もっと生徒会活動真剣に取り組んでいきたいと思いました。みんなで一つのものを作り上げる楽しさを是非後輩たちに伝えられるといいなと思います!」

●飾り気がなくシンプルでひたむきであることに「美しさ」を感じる人が多いのではないでしょうか。目に見えない「情熱」の力が、物事を見える化するのだと思います。これはヒトにもモノにも当てはまるのではないかと考えます。

村瀬@学校長