令5 1学期終業式より(R5/7/20)「生成AI時代に必要な2つの能力」

今日はあらかじめ用意してきた文章がありますので、まずそれを読みたいと思います。

 

 本日は令和5年度の1学期終業式にあたり、私としては感慨深い思いでお話しすることとなりました。この1学期間、皆さんは多くの学びや経験を積み重ね、成長してきました。その成果に対して、心からお疲れさまとおめでとうございます。

 この1学期は、皆さんにとって多くの試練とチャレンジがありました。新型コロナウイルス感染症の影響により、学校生活や学習環境が大きく変化しました。しかし、皆さんは困難に立ち向かい、逆境を乗り越えるための力強さを示しました。その姿勢に感動し、心からの敬意を表します。

 1学期の終業式は、新たなスタートを切る時でもあります。次の学期に向けて、新たな目標や抱負を持ちましょう。自分自身の成長を追求することはもちろん、周りの人々や社会への貢献を考えることも大切です。自分の夢や目標を追い求めることで、将来への道が明るく広がっていきます。

 また、今日卒業する生徒の皆さんへ。高校生活は短い間でしたが、多くの思い出や成果を残してくれました。心に刻まれた経験を大切にし、これからの人生に活かして下さい。将来の進路や目標に向かって、自分自身を信じて前進していって下さい。私たちは皆さんの成功を心から応援しています。

 最後に、1学期間お世話になった教職員の皆さんに感謝の気持ちを述べたいと思います。教育の道を選び、日々皆さんの成長を支えるために尽力してくださったことに深く感謝しています。また、保護者の皆様にも感謝の意を表します。ご家庭での温かい支援と協力が、生徒たちの成長に大いに寄与しています。皆さん、1学期間お疲れ様でした。次の学期も新たな学びと成長の機会が待っています。困難に立ち向かい、仲間と助け合いながら、目標に向かって進んでいきましょう。素晴らしい夏休みをお過ごし下さい。

 

いかがでしたか。何か変な文章でしたよね。一つ一つの語句はもっともらしいけれど、文章にすると何か変で、誰にでも当てはまるような言葉ばかりだし、逆に本校の実情にも合っていないこともありましたよね。つまり言葉が上滑りをして、聞いている人に全く響かない文章でしたよね。実は私が読んだ文章は、今話題の生成AIで作成したものです。生成AIというのは、ネットなどに既にある膨大な量の情報から、文章であれば次に来る単語等を推測し、統計的にそれらしい応答を生成する仕組みです。ちなみにこの文章を作成するために入力したワードは「愛知県立安城東高等学校」「1学期終業式」「校長」「式辞」の4つです。私は人工知能の発達はすごいなと思う反面、現段階ではまだ、そのままの形では使い物にならないとも思いました。

今、生成AIが世の中で、業務の効率化を図るたいへん便利なものともてはやされていると同時に、人間の考える力を奪うもの、特に学生に対する悪影響も叫ばれています。本校では既に5月に、生成AIに関する仮の指針をHPやメールでお知らせしていましたが、7月4日に文科省から教育における生成AIに関するガイドラインが示され、愛知県でも7月12日にガイドラインが発出されましたので、本校も2学期には方針をみなさんに示す予定です。国と県のガイドラインによると、生成AIは誤りを含むことが多くあること、個人情報保護法に違反する可能性があること、著作権の侵害になる可能性があること、特に学生が読書感想文、レポート、小論文、音楽や美術などでそのまま使うのは、想像力・感性・独創性を奪い、不正行為となる場合があること。そういったデメリットをしっかり認識して使用していく必要があることなどが示されました。そしてもし使用するのであれば、例えばアイデアを出すための過程で、足りない視点を補完する素材やたたき台として活用することに限定し、最後は自分でじっくり推敲して判断することが必要だとも書かれていました。

そもそも人間にとって想像力・感性・独創性は非常に重要なものであり、それを育成する学生時代に生成AIを安易に多用すると、悪影響が懸念されます。1・2年生は夏休み課題の読書感想文、3年生は、国公立二次試験の小論文や面接の受け答えなど、やはり自分で考えないと、いざという時に想像力が発揮できなくなります。とはいっても便利なものであることには間違いなく、今後、生成AIが普及した世の中になることも間違いないでしょう。そのような時代となった時に我々はどうすべきなのでしょうか。その時に必要なことは2つあると思います。

一つは自己選択能力です。これは言い換えれば自律性もしくは自主性と言ってもよいと思います。生成AI、コンピューターグラフィックス、AR,VR,MRなど、現代は何が本物で何が偽物か、また何が正しくて何が間違っているのかの見分けが難しい世の中です。さらに多様性が尊重され、価値観も多様化しているため、選択肢が非常に多い世の中でもあります。多くの選択肢の中で、正しいものを見つけてどのように主体的に行動をすべきか。そういった能力がこれから必要になってくると思います。実は今、本校においてお試しで実施している、服装の多様性を認める「さわやかセレクション」も、今年度の東校祭でスマホを解禁したのも、みなさんの自己選択能力を問うための試みです。自由度が増せば増すほど、自己選択の責任が伴うことを忘れないで下さい。また、ルールが破られてしまうとその反動で、自由に規制がかけられてしまうことも同時に忘れないで下さい。やってはいけないと規制されていることでも、こっそりやればやれてしまうことが多くなってきた社会の中で、いかに自己判断で責任をもって動くことができるかが問われているのです。

もう一つは言葉に温度、体温を乗せることの重要性です。先ほどの通り、AIの作った文章は、もっともらしい言葉をつなぎ合わせてますが、書いた人の体温が伝わらない冷たい文章となっています。会話であれ、文章であれ、他人とコミュニケーションを取る時には、その言葉に自分の思いや気持ち、つまり体温を乗せることが大事です。例えば謝罪する時には淡々と「すみません」よりは感情を込めて「…申し訳ないです。…本当にごめんなさい…。」と言った方が、相手に気持ちが伝わります。特に読書感想文や小論文や志望理由書や面接などでは、自分が考えたことや自分の体験を自分の言葉で気持ちを込めて述べることが大事です。AIで文章の原案を作ったとしても、そこから推敲が必要になりますので、結局普段から表現力を磨いておかなければいけないということです。

スマホの場合もそうですが、もはや不便な時代に後戻りはできないため、やはり問われることはその使い方です。生成AIが今後さらに普及していった時に、みなさんはそれを適切に使いこなすことができるでしょうか。正しい知識をもって、TPOをわきまえながら、適切な判断と自分の責任のもとで物事の選択ができるでしょうか。また、体温の伝わるコミュニケーションができるでしょうか。自分で考えて自分で選択して自分で行動するということは、これからの安城東高校全体の重要なテーマでもあります。それをこの夏休みからぜひ挑戦してみて下さい。応援しています。