今の時局を捉える(2021年5月18日発信)
●令和3年5月18日、1学期中間考査の終了に際して、「今の時局を捉える」というメッセージを全校生徒に発信しました。その内容の一部は、次の通りです。
1学期中間考査はいかがでしたか。終わってしまったことには常にいろいろな思いが付きまとうというのは世の常です。私は、半世紀以上それを繰り返してきました。私たちが今共有しているのは、東高祭に向けて次のステップに向かう季節となったことです。それを私も噛みしめています。
○緊急事態宣言下という時局を考えてみると、不安を持ちながらの日常生活がまだまだ続きます。それは、私たち職員も同じです。東高祭が1年間の最大の生徒会行事であればこそ、ますますその気持ちは強くなります。
○「人間という頭でっかちな動物は、目の前の輪郭のはっきりした危機よりも、遠くの輪郭のぼやけた希望にすがりたくなる癖がある。だから、自分はきっとウイルスに感染しない、自分はそれによって死なない、職場や学校は閉鎖しない、あの国の致死率はこの国ではありえない、と多くの人たちが楽観しがちである。私もまた、その傾向を持つ人間のひとりである。甚大な危機に接して、ほぼすべての人びとが思考の限界に突き当たる。だから、楽観主義に依りすがり現実から逃避してしまう。」「パンデミックを生きる指針」(岩波新書編集部・京都大学准教授藤原辰史)
○これは、楽観主義にすがりたくなるという人間の特性を踏まえ、私たちは、起こりうる事態を冷徹に考えなければならないことを語った言葉です。この時局の中で、健全で安全な、皆が居心地の良いと思える東高生活を実現し、最大の生徒会行事である東高祭を成功させるためには、楽観主義にすがりたくなる気持ちを互いに抑え合い、知恵を出し合って感染症に最大限配慮して準備を進めていくこと以外にないだろう。これは、「新しい日常生活」の創造のための人類の課題であると私は考えています。
○こんな時局だからこそ、私たち職員は生徒の皆さんに、次の2つのことを実現します。1つ目は、中間考査後に昼休みを5分間延長すること、2つ目は、緊急事態宣言解除後、6月1日(見込み)から昼休みの時間に限り購買部を再開することです。新しい購買部では、パン・弁当(丼物・お惣菜)・飲み物・デザート類の販売を始めます。これは、生徒会役員の方の働きかけと安城東高校の先生方の努力によって実現するものです。
○このことが、私たちの「新しい東高生活」の創造のために、プラスに働くことを私は期待しています。
●この「今の時局を捉える」について、Classiを通して寄せられた東高生の意見は、1週間で56通寄せられました。以下に主なものを掲げます。
<1年安城西中学校出身>「正常性バイアスは程度が肝だと感じました。物事を冷静に見る事も、ストレスから自分を守る事も、どちらも上手に両立すべきと思いました。最近、コロナによる経済活動の停滞に関する情報について調べていたんですが、コロナは感染者が多い国(英仏米など)の方がワクチンが早期に普及し、既に経済活動の再開に向けて着々と進んでいますが、感染者が少ない国(日韓NZ豪など)はワクチンが普及しきっておらず、経済活動の再開の見通しがまだ立たず、厳しい状況になっています。日本はワクチン接種率がOCED加盟国の中で最下位、今年中に国民全員がワクチン接種できるか微妙なので経済活動の再開に非常に遅れを取りそうな感じがしているのでちょっと不安です。」
<1年塩津中学校出身>「みんなが<まだコロナが収束しないのか>とマイナスな気持ちになっていっているこの時期にプラスの試みをしてくださること、そのために私たちが知らないところで働きかけてくださったことに感謝です。私も<自分はコロナにかからない>と楽観的に考えてしまいます。でも冷静に考えたら身の回りには危険がたくさんあります。購買部、放課の延長が始まるので気を緩めるのではなく、今まで以上に気を引き締めて感染症対策をしていきたいです。」
<2年桜井中学校出身>「楽観的な考えにすがりたくなるのは、緊急事態宣言の現状だけでなく、今日の安全講話であった話や、考査についても同じようなことが言えると思いました。昼食時の時間が5分のびることも、購買が再開することも、いまよりもさらに学校生活が充実すると思います。」
<2年明祥中学校出身>「このご時世友達や家族と行きたいところに行けないということが多く嫌な気持ちが続きますが、そんな中でどういうことができるか、また新しい考え方で取り組んでいくのがいいと思いました。」
<2年篠目中学校>「一人一人が感染について考え、予防し、感染病に関わる人々に理解を示すことが大切だと感じました。今できる限られたことの中で楽しさ、やりがいを見出すのは素晴らしいことだと思います。失って気づいた当たり前の大切な日々を取り戻すために、みんなで協力していきたいです。」
<2年安城北中学校出身>「確かに自分に都合がいい未来ばかりにすがってしまうなぁと自分を思い返してみて思った。これからは今のことに正面から向き合い考えられる自分になれるようにしたいと思った。」
<3年篠目中学校出身>「今は新型コロナウイルス(それも、変異型)が流行っており、中には若くてもなくなる方もいます。そんな暗い世の中ですが、これから始まる東高祭に向けて、感染症対策も十分にしながら、積極的に活動したいと思いました。後は、コロナウイルスが蔓延しないように自分たちにできることをやりたいと思いました。
<3年翔南中学校出身>「藤原辰史氏の言う通りだと思います。自分はコロナにはかからないだろうという安易な気持ちでこれまでと同じ生活を送っていました。そんな中で、もし自分がかかっていたら行事も日常生活も、自分の軽率な行動のせいで潰れてしまう、と想像することが、校長先生のお話から改めて大切だと思いました。危機管理能力を上げていくためには、<ちりつも方式>を大切にすることが必要です。小さなことから対策をして自分たちがやりたいことを精一杯できるように、これからもしっかり感染対策をしていきたいと思っています。東高生らしい行動していくことが今生徒のすべきことだと思います。東高祭の準備やコロナ対策その他もろもろ頑張っていきます!」
●いろいろな事態や変化に向かうために私たちが大切にしなければならいないのは、想像力なのでしょう。最近、この想像力こそが創造力の源ではないかとよく考えるようになりました。「不要不急に愛のある生活を!」を実現するために、まずはできることから始めたいと考えています。
村瀬@学校長