令7 第48回卒業証書授与式より(R8/2/28)「『歳寒三友』と『風雪磨人』」

式 辞

今から四十年前の昭和六十一年に、八回生によって植えられた中庭の梅の木が、一月初旬に芽を出して、一月二十日から綺麗な白い花を咲かせています。そして校内に植えられている桜の木がもうすぐ芽を出し、満開の花を咲かせる時期が少しずつ近づいています。

そんな冬から春に向かう季節の変わり目の中、早春の今日の良き日に、来賓の皆様のご臨席を賜り、愛知県立 安城東高等学校 全日制課程 普通科の卒業式を無事挙行できますことを、心より感謝申し上げます。

第四十八回生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。また、保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。教職員一同、心からお祝い申し上げます。高校卒業は、お子様の自立に向けた一つの大きな節目として、少しほっとされているのではないでしょうか。

さて、四十八回生のみなさんは、三年前の令和五年の春に、安城東高校へ入学してきました。みなさんが中学生の時に、世界中に蔓延した新型コロナウィルスも落ち着きをみせ、ほぼ制限がなくなっていた時期でした。この年は桜の開花が例年より早く、入学式では校内に植えられている桜も、緑の葉が多かった記憶があります。一年生の春は、高校生活にまだ手探り状態だったと思いますが、その後みなさんは、季節の移り変わりとともに、それぞれの高校生活を、それぞれの形でひたむきに頑張ってきたことと思います。

正門前の校訓「達」の石碑の後ろにあるクスノキに、緑の葉が青々と茂り始めた二年生の初夏の頃には、高校生活にも慣れ、中核学年として勉強に部活動に学校行事に、一人一人が躍動したことでしょう。

本館前の池の築山にあるトウカエデの葉が赤く色づき始めた三年生の秋頃には、ほとんどの人が受験一色となったことでしょう。

特に十二月以降の冬は正念場だったと思います。それはちょうど、寒さに耐えながら芽を出し、花を咲かせようとする中庭の梅の木のように、必死に頑張ったのではないでしょうか。いや、今も頑張り続けている人は多いと思います。その努力は間違いなく将来の大きな財産となるはずです。

ちなみに梅という木は、お祝い事のシンボルとして、松と竹とともに松竹梅としてよく用いられますが、なぜお祝い事に使われるようになったかというと、もともとは中国の歳寒三友(さいかんさんゆう)という言葉からきているそうです。歳寒三友とは松、竹、梅の三つの植物を指しており、字は歳月の歳、寒いの寒、三つの三、友達の友と書きます。松、竹、梅は冬の風雪の寒さに耐えながら、青々とした緑色を保ち続けたり、花を咲かせたり、その美しさを保つことから、不屈の精神、強さ、しなやかさ、希望、友情の象徴として扱われてきました。

それに関連して、本校の正門を入って左の大きなヤマモモの木の前には「風雪磨人」と書かれた石碑があります。風雪磨人の字は、かぜ、ゆき、みがく、ひとという字を書きますが、これは本校が開校して九年後の昭和五十九年、全国学校環境緑化コンクール高校の部で、安城東高校が文部大臣賞を受賞して日本一になった時に、当時の文部大臣から贈られたものです。意味は困難な状況に耐え、努力していくことで人間力が磨かれていくというもので、松竹梅と通じるものがあります。

また、桜の木が開花するには「四百度の法則」や「六百度の法則」がよく言われています。二月以降、毎日の平均気温を足して四百度に達した頃、あるいは、毎日の最高気温を足して六百度に達した頃に桜が開花する、というものです。さらに、桜は冬が暖かすぎると開花が遅れたり、花の数が少なくなったりするそうです。つまり桜の開花には、冬に一定期間の寒さが必要で、毎日のこつこつとした気温の積み重ねが必要ということです。

みなさんは三年間の高校生活で、冬の寒さも経験しながらこつこつと努力を続け、まさに今、梅の木がつぼみをつけて花開いたように成長し、そして桜がこれからつぼみをつけて花を咲かせるように、未来への大きな希望を抱いています。人生には春も夏も秋も冬もあります。冬の後には必ず春が来ます。また、花が咲く時期がその樹木によって違うように、人にも早咲きの人もいれば遅咲きの人もいます。それを踏まえて、私が最後にみなさんにお伝えしたいことは、人生は常に道の途中、英語で言うon the wayであるということです。これは私が毎年卒業式で言っていることであり、先日の三学期始業式でも少しお伝えしたことです。つまり、今自分がどのような状態であったとしても、みなさんにとって、まだまだ先の長い人生の道のりの一部でしかないということです。人はみな、完成することのない道を、進んだり戻ったりしながら歩いており、みなさんも今後の生き方次第で人生は大きく変わっていきます。今後みなさんが生きていく上で、校訓「達」のように達成・到達して成功しても、満足し過ぎないでください。逆に、うまくいかなくて希望が消えたように感じたとしても、絶望して下を向かないでください。満足も絶望も程度が強いと進歩や成長が止まります。常に人生の道の途中だという認識をもちながら、前と上を向いていきましょう。それが私のみなさんに対する願いです。

それではみなさんの輝ける未来における活躍と、御参会の皆様方の御健勝と御発展を祈念して、式辞といたします。本日は四十八回生のみなさん、そして保護者の皆様、ご卒業、誠におめでとうございます。

 

令和八年二月二十八日  愛知県立安城東高等学校長 近藤和巳