<令和>の安城東高校

〇学校が最も大切にしなければならないことの1つに、学校文化の継承・創造という営みがある。それは、知的遺産を学術の形で整え始めたり、歴史性のある事物を有形無形の文化遺産として継承・保存したりしてきた人類の営みと同じである。

〇創立47周年目に入った本校の営みは、これから大きな転換期を迎える。それは、本校の歴史に深く関わられた方々からの「もう半世紀になるんだ」という感慨深い言葉の中に見い出せる。半世紀というのは、十分、歴史の大きな転換期として捉えることができる。このことは、「<普通科>としての本校の特色をどのように語ることができるか」という問いとなって、今、安城東高校の大きな課題となっている。

〇そもそも「普通科」とは何か。これは、法律的には、普通教育(高校では普通課程)を主とする学科として、全国民に共通の、一般的・基礎的な、職業的・専門的でない教育を指すとされ、9年間の義務教育と密接な関連をもつ言葉として使われている。その内実は、学校によって多様であるが、安城東高校にとっての「普通科」の意味を明確にし、それを教育活動として可視化する取組が求められている。

〇創立以来40年以上続く国際交流の活動や近年の国際理解コースの取組は本校の持つグローバルな視野を、そして、鳥取県大山や石川県能登千枚田などへの奉仕体験や長崎県中心とする自然・歴史・まち体験などの現在の課外活動は、ローカルな視点で行動することの必要性を語っている。これらを人類の持続可能性の観点からつなぎ、各教科で学んだ知識を統合する新しい教育活動を令和4年度から展開している。それが、本校独自の総合学習「グローカルスタディーズ」(GLS)である。本校がこれから目指すべき人材育成の指針は、「グローカル人材」である。

〇安城東高校の在校生出身地区は、安城・矢作・幸田地区を中心としながらも、現在、三河62中学校区に広がっている。三河各地域から、様々なローカルを背負った生徒が、現在、この碧海野大地に集まっている。これからの時代を担う青年に求められることは、グローバルな視野をもちつつ、様々な局面をもつ可変的な活動ステージであるローカルを意識して、多様性を認め合い尊重しながら自己を確立し共生していくことである。

〇GLSを中心とした教育活動では、各教科の学びを青年期に必要な「教養」として捉え、それを統合する学習過程を編成する。東京大学教養部との連携協定締結による東大発教養講座の配信、有識者による各種セミナーの開催(令和4年度は外務省セミナーを開催)、他県高校との課題探究合同発表会の企画、アジア・欧米諸国(オーストラリア、アメリカ、ドイツ、タイ、シンガポール、韓国)とのICTを介した交流活動等の試みなどを通して、新しい人材育成の指針に沿って、現在、私たちは取り組んでいる。令和4年6月に、全面改訂した安城東高校の新学校案内(クリック!)には、これから向かう安城東高校の人材育成の指針を示した。

〇「普通科」安城東高校の学びの中味は「教養教育」である。「教養」とは、情報や体系化された知識だけではなく、課題に対して主体的に粘り強く取り組む態度や共生の精神とともに、自己決定の保障による自律心の涵養なども含む言葉である。令和4年度からは、生徒会が中心となり、「さわやか Selection!」と題した取組を始めている。登下校がしやすく学校においても過ごしやすい服装を個人が選択できる幅の拡充を進めた。学校スリッパの見直し、清掃活動の在り方、ジェンダーレスな制服の導入等、これからも、生徒会執行部と職員による協働企画を進めていく。

〇創立50周年に向けた、教科ごとに個別化された学習の統合化(GLS)、個人の選択の機会拡充による自己決定の保障、それを促す生徒会活動の活性化などの取組は、幅広い「教養」を習得し、大学における学びを支え将来の社会貢献へと導く試みである。

〇創立47周年が過ぎ、本校開校当初の木々は今や豊かな森と化し、安城東高校に集う青年たちの「教養を育む森」として生まれ変わろうとしている。この創立50周年に向けた3か年の道のりは、全日制普通科安城東高校ブランド化への歩みであることを職員一同とともに確認している。

(村瀬@学校長)