安城東高校の「普通科」とは「教養科」!

●令和4年5月2日(月)、連休の合間のさわやかな一日です。今日の7限LTでは、学年集会等が開催されます。

・1学年は、学校長と学年主任が体育館にて、「高校で学ぶということ~選択を考える」について、
・2学年は、学年主任がオンラインHR配信にて、「進路について~大学入学共通テスト」について、
・3学年は、HR担任がHRにて、「東高祭」について、取り上げます。

これらは、「普通科」としての安城東高校の大切な「教養」として私たちはとらえています。安城東高校の普通科とは、意味的には、「教養科」です。

●そもそも「普通科」とは何か?これは、「専門学科」に対する言葉ですので、単独で語られることはあまりありません。普通教育(高校では普通課程)として、全国民に共通の、一般的・基礎的な、職業的・専門的でない教育を指すとされ、9年間の義務教育と密接な関連をもつ言葉として使われています。

●安城東高校の「普通科(国際理解コースを含む)」の特色は、本校生徒がほぼ100%大学進学を目指していることから、「大学で学びを深めるための教養」として、さらに、生涯にわたって学び続けるための知的素養として、各教科の学習や学校行事を位置付け、それらを学校の教育活動として見える化していることにあります。その意味で、「教養」とは、課題に対して、これまで習得した生きて働く知恵を活かして、粘り強く取り組む態度も含むものです。それは、「修養」(知識を高め、品性を磨き、自己の人格形成につとめること)という言葉でも語られるものです。

●「教養」とは、かつて、リベラル・アーツといわれていたことを起源として、最近の大学教育においても再評価されています。全国から受験生が集まり、その教育活動が企業からも高く評価されている秋田県立の国際教養大学は、まさに「教養」を冠に掲げた大学として知られています。本校の卒業生もここに入学しています。

●物事の本質を捉える哲学の立場から名古屋大学の戸田山教授(科学哲学)は、「教養」とは、「大人になるための勇気と装置である」と述べています。では、安城東高校が考える「勇気」と「装置」とは?

・「大人になるための勇気」とは~今年の4月からの民法改正による18歳成人に関連して、「大人」とは何か議論されています~自分の責任において判断し決断する力としてとらえています。様々な情報を組み合わせて意思決定し、その結果に対して自ら責任を負うということ、覚悟と自覚をもって決断する力が、本校の求める「大人になるための勇気」です。この「勇気」こそ「大人」の要件であり、それを培うことを安城東高校はとても重要視しています。具体的には、さまざまな領域での選択の機会を提供していることです。それが「大人になるための装置」です。

・「大人になるための装置」とは~この場合の装置とは、見える化されたシステムです~学校の一連の教育活動のことです。「文武両道」、「文武一道」を校是とする安城東高校では、覚悟と自覚をもって決断する力を身に付けるために、現在、個人の選択の機会(選択の自由)の拡充を推進しています。たとえば、今年から生徒会を中心に検討を始めている独自の「さわやかセレクション(仮称)」(一定期間、制服以外の服装による登下校の自由を大幅に拡充する)や身だしなみなどの大幅な校則の見直し(そのための全校アンケートの実施)、修学旅行におけるクラス別訪問地の選択、東高祭(文化祭と体育祭)における生徒企画の拡充、授業日以外の課外学習での受講科目選択制の拡充(3年生)、新入生から始める「グローカル・スタディーズ(GLS)」(市民として必要な教養を育む授業)と名付けた新しい総合学習の展開など。

●意思決定の結果に対して自ら責任を負い、覚悟と自覚をもって決断(選択)する力(「大人になるための勇気」)を育てるためには、「問い」のカタチで考える習慣を身に付け、結論はすぐに見つからなくても、自分なりに考えてみること(追究してみること)、その問いについて幾人かの友達と対話(意見交換)を繰り返すことが有効です。しだいに、自分なりの見方考え方が育まれ、選択の際の判断基準も明確になってきます。選択とは、その人なりの見方考え方そのものだからです。

・教科学習であれば、人・社会・自然を対象に「問い」を発して考えていく。たとえば、「なぜロシアは、国際社会を敵にしてまでウクライナへの侵攻をし続けるのか?」、「なぜ生き物は左右対象物が多いのか?それはシンメトリック(左右対称)な建物と何か関連しているのか?」・・・

・部活動・生徒会活動であれば、部員や生徒、学校を対象に「問い」を発して考えていく。たとえば、「練習メニューの効率を上げるために何を改善すべきか?」、「伝統と時代性を踏まえた東高祭の新企画を実現するための有効な働きかけは何か?」、「私たち(生徒の皆さん)にとって、品位・品格をたもちながら、快適に過ごせる身だしなみはどうあるべきか?」・・・

●日常的な無意識の選択から、自分の在り方生き方などの意識的な選択など様々なレベルのものがありますが、これらの中で高校だからこそ取り上げることができるテーマ(自覚して取り上げた「問い」)こそ、私たちが大切にしたいことです。自己決定ともいえる様々な選択の場面の設定と「問い」で表現された各自のテーマの追究は、教科学習や特別活動で学ぶ知識(知恵)、「高校生と大学生のための金曜特別講座」(東大講座)や各種セミナー(教養講座、今年は外交セミナー他を展開)に支えられて、自己の在り方生き方(進路決定)を定めるヒントを与えてくれるはずです。

●私たちは、「大人になるための勇気と装置」を備えるための教育を「教養」としてとらえ、それを大学教育(高等教育)とつなぎ、将来への社会貢献(将来の職業)へと導きます。それが、安城東高校の「普通教育」です。

●「解より問いを求めよ!」、この5月、安城東高校の正門横掲示板に掲げた言葉の意味がここにあります。

(村瀬@学校長)