高校での学びとは〜問いを持つことの大切さ

●人類の歴史を遡(さかのぼ)ってみれば、「なぜ戦争が起こるのか?」という問いと共に、それ以上に大切な問いとして「戦争をどのように防ぐのか?」があったことに気付く。つまり、戦争が起こることが避けられない事態として存在し続けてきたことは疑いようもない事実であった。3年生の皆さんは、このことがすぐに理解できるでしょう。

●それは、言い換えれば、「国際社会が、紛争解決の手段として<戦争>を選択しない(戦争をできない)ようにするためにはどんなことが考えられるか?」という問いである。最近では、地政学的な視点(国の地理的な条件をもとに、政治的、社会的、軍事的な影響を読み解く視点)がよく取り上げられ、戦争そのもののが多角的に論じられている。人が生きるステージである土地(領土)をめぐる戦争は、いかに防ぎうるのか、日本も傍観者ではいられない事態がある。

*例えば、地政学からみた日本について、外務省HPの論稿がある(クリック!)。これは、外務省発行の外交雑誌「外交」に掲載されている論文である。外務省のHPには、広報資料や刊行物、動画がたくさん掲載されており参考になる(「キッズ外務省」、「わかる!国際情勢」他)。https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/

●では、毎日のように戦況が報道されている現在のウクライナ情勢をどのように理解したら良いのか?それを考えるためのヒントが届いた。「ぜひ高校生の皆さんへ」ということで、知人である東京大学院総合文化研究科・教養学部教授、東京大学広報室長の杉山清彦氏からの情報提供である。本校は、東京大学教養学部と連携協定を締結し、「高校生と大学生のための金曜特別講座」(クリック!)を提供している。彼は、以下のように述べる。

「ウクライナ情勢解説および情報分析の記事をプロデュースしました。
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00153.html
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00151.html

『イスラエルの起源』(講談社選書メチエ)などで知られる鶴見准教授には、ご専門をふまえた知見・分析を平易に語っていただきました。不足はあろうかと思いますが、専門家向けではなく、関心はあるけれども新聞解説・TVニュースを見るにとどまっている層に補助線を与える、というくらいを狙っていますので、世界史を履修している学生・生徒にも届くかと思います。」

●「個人的な切迫した問いは十分に深いところで捉えれば、普遍的な学問の問いと連結する」とは、元京都大学教授の社会学者大澤真幸(おおさわ・まさち)の言葉である。

●最近の大学教育(高等教育)が新入生に求めるのは、「解より問いを求めよ」という姿勢である。これからの先行き不透明な時代を託す若者に求めるのは、日常生活で気付いたことや高校での学習の中で抱く「素朴な疑問」(問い)である。学問とは、どこかしらの大学の一部の専門家の特許ではない。私たちの「素朴な疑問」を丁寧に解き明かそうという試みであることを肝に銘じたい。

●単なる理想主義や夢から現実に目を向けることの大切さと探究の手続き(学び方)を教えてくれるのが、高校での様々な授業(学習)なのである。自分の生き方までも考えさせてくれる、知的基盤(教養)と呼ばれるものは、高校までの学習で全て出揃う。

なお、先の「高校生と大学生のための金曜特別講座」では、令和4年5月6日(金)に下記の講座をオンラインで配信する予定です。受講のための詳細情報は後日、classiにて配信いたします。

(村瀬@学校長)

不思議の国ロシアを考える

  1. 日時:2022年5月 6日(金) 17時30分から
  2. 受講生:連携協定を結ぶ全国の学校の高校生、安城東高生、東大学生と教職員、東大駒場友の会会員へのオンライン配信のみ
  3. 講師:小泉 悠 東京大学 先端科学技術研究センター・専任講師

【講義概要】

「ロシアは日本の隣国であり、世界最大の国土を持つ国ですが、実際にどんな国なのかはあまりよく知られていません。どんな人が、どんなふうに暮らしているのか。なぜ戦争を繰り返すのか。これからどうなっていくのか。こういった切り口から「不思議の国ロシア」について考える講義にしたいと思っています。」(小泉講師)

*ちなみに、小泉氏は、ウクライナ情勢に関する様々なTV報道の解説者としても活躍中です!

*この小泉氏の講義概要も、数々の「素朴な疑問」から構成されていることに気付きますね!