【写真部】写真の中の物語

●高校生の珠玉の芸術作品が一堂に会する愛知の総合文化祭、それがアートフェスタである。今年も引き続きコロナ禍で、文芸部門は中止、舞台・パネル部門の通常開催はなくなり、展示部門のみが、愛知芸術文化センターで開催された。

●本校の写真部に所属する生徒の作品が県で優秀作品として選ばれ展示されるということで、最終日の令和3年8月22日(日)に会場を訪れてみた。

●それは、現3年生浅岡杏実さん(安城西中出身)の「桜花 Run 満」という作品である。

●浅岡さんはこの作品について、次のように説明している。

「満開の桜の下、コロナ禍でも子供も犬も元気いっぱいです。でもやっぱりマスクなしで走り回れるといいですね。」

●四季の移り変わりと深くかかわりをもとうとする日本の伝統的な文化としての花見は、中国の文化が流入した後、奈良時代以降に始まり、平安以降に桜を愛(め)でる意識が高まり、現在の形になったそうである(岐阜大学柴埼直人准教授)。桜の木の下に集うことで、神が花に託したパワーを人間の体内にチャージするということらしい。

●「神の見えざる手」が花を咲かせ、生きるものをパワーアップするという解釈は、この作品を観ると一層味わい深くなる。ここに描かれた兄弟、従兄弟、愛犬の表情やその姿形は、天から降りてくる桜の花の勢いと一体化しており、それらを地に広がる緑の絨毯がしっかりと受け止めているという作品の構造を読み取ることができる。

●カメラを構えている浅岡さんの立ち位置を推測すれば、静止画像であるこの作品に時間の変化を感じることができよう。浅岡さんの位置までたどり着いたあとは、きっと4人?で、一緒にステップを踏んだに違いない。それは、これまで生きてきたよりも長い時間である未来に対するステップである。

●このように考えてみると、この作品の魅力は写真全体の構図にあると思える。マスクがあっても、生きとし生けるもの、多様な生命の力を捉えることを可能にさせている。「神の見えざる手」は、いたるところに潜んでいる。

村瀬@学校長